この時のために

十字架の時を間近に控えて、イエス様は群衆の前で祈るように語ります。

　イエス様は十字架の苦難が間もなく始まることを知っていて、こう言われました。「今、わたしは心騒ぐ。何と言おうか。『父よ、わたしをこの時から救ってください』と言おうか(27節)」

　偽りのない、本当に素直な告白です。誰が十字架にかかることを、しかも無実の罪で殺されることを喜ぶでしょうか。ここには、イエス様が主なる神様でありながら、文字通り完全に人間となられたことがよく表されています。人の苦しみと恐れがこれ以上にないほどリアルに見て取れます。

　なぜ、こんな苦しみを受けなければならないのでしょうか。神様はどうして人となって苦しまなければならないのでしょうか。この苦しみはまさに私たち一人ひとりの罪を負うためのものでした。

　だからこそ、苦しみと恐れから出た心の思いをイエス様はすぐさま否定して言います。「しかし、わたしはまさにこの時のために来たのだ(27節)」

　私たちが負うべき罪の罰、その苦しみと恐れを全て代わりに担うためにイエス様は生まれました。この十字架のためにこそ、イエス様は来られたのです。何という悲しい人生の目的でしょうか。しかし、イエス様は自らの使命を自分自身に言い聞かせるかのように宣言します。

　そして、「父よ、御名の栄光を現してください。（28節）」と十字架に進む決心を祈るように言います。十字架と復活は主の私たちへの愛の証であり、私たちはそれらを通して主の栄光を最もハッキリと見ます。

　私たちはイエス様によって主を知り、本当の愛を知ることができます。そして、私たちはまたその愛に生きることを通して、主の栄光をあらわす歩みへと導かれていくのです。主イエスの十字架と復活を仰ぎ、その後に従いましょう。

十字架の苦しみは誰のための。私たちの十字架(使命)は。