夢のお告げ

マタイによる福音書2章13~23節 

占星術の学者たちが、ヘロデ王に会わず、別の道を通って帰ったことを通して、旧約の時代から言われていた2つの大きな悲劇が現実のものとなります。

1.2つの悲劇(13節,16節)
 占星術の学者たちが帰った後、幼子をめぐる悲劇が起きます。一つは、幼子イエス様に対する殺人計画です。父ヨセフは、夢で告げられ、イエス様とマリアを連れて、言われた通りにエジプトへ逃げていきます。もう一つは、ベツレヘムの幼子虐殺命令です。ヘロデ王の王権剥奪の不安は頂点に達します。そして、預言者によって言われて「救い主がお生まれになるベツレヘム」で、その条件に相当する2歳児以下の幼子が皆殺しにされることになります。
2.ラケルの悲しみ(18節)
 2つの悲劇は、イサクの子、ヤコブの妻であり、ヨセフの母であった「ラケルの嘆き」になぞらえて、預言者エレミヤが言葉にします(エレミヤ31:15)。ラケルは幼子と別れなければならない悲劇の母親でした。その悲劇がここでの悲劇と重なり合っています。一つは、エジプトに売られてしまった長男ヨセフとの別れ、もう一つは、難産の末、生まれた次男ベニヤミンとの別れです。ラケルはベニヤミンの出産と引き換えに、息絶えていきます。ラマはベニヤミンの領土であり、悲劇を象徴する場所でもあります。そして、その土地の祭司であったエレミヤが、ラケルの嘆きに想いが至ったことは、ただの偶然ではありません。神様の深いご計画の中で、大きな意味のある悲劇であったこと、またそれがイエス様の生涯と重なり合ってくることに、私たちは神様の隠された真実を観ることができます。
3.旧約の救済を引き受けたイエス様の生涯(19~21節)
 ヘロデ王の死を、再び夢のお告げにより、ヨセフは家族と共に、イスラエルへ呼び戻されます。そして、イエス様の命を思いナザレの土地へ移住します。この出来事は、旧約の預言をすべて実現しています。預言者ホセアの言葉「エジプトからわが子を呼び出す」(ホセア11:1)は、モーセの出エジプトの出来事と、イエス様のエジプトからの呼び戻しを重ねています。ここに、イエス様の生涯が、人類の救済となることが、影絵のように、映し出されているのです。
 イエス様の生涯は、旧約で成しえなかった「人の救済」のやり直しのようにも思えます。そこから、神様が私達を神の子として迎えたい思いの強さを感じるのです。

 私たちの存在は、私たちが思う以上に神様に大切にされています。